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第七章 「隔たり∼平頂山で起きた事件」

  母と共に祖父の家を訪れた春。当時、自分の息子が日本人の血を引く者と結婚することに対し猛反対していた祖父。そんな母と祖父とのやりとりは今なおどこかぎこちないものがあった。そして祖父から、彼が体験した昔の話しを初めて聞かされる。

  春の祖父は河南省平頂山出身であり、祖父が幼かった頃、その村落で日本軍による大量虐殺が行われた。奇跡的に一命を取り留めた祖父は、唯一の肉親である、ハルビンにいた彼の叔父の元を訪ねた。叔父に我が子同然のように育てられた祖父であったが、二十歳になった祖父の前に、日本軍が再び現れた。祖父は日本軍に強制連行され、終戦するまでの間、労働者として日本で過酷な労働を強いられた。

  一方、学校生活においては、体育大会を間近に控えており、時一婷のもくろみと馬志鵬の復讐が重なろうとしていた。初めは、確かに存在していた「憎しみ」。しかし時の経過と共に、思い違いや思い込みが幾重にも連なり、その憎しみはやがて不透明なまま形を変えて膨れ上がってしまう。

  体育大会当日、馬志鵬と時一婷はそれぞれ仲間を引き連れ、また、春側も仲間を集め迎え撃つこととなった。総勢二百人近くの生徒たちが衝突し、前代未聞の学校内による大乱闘が勃発した。

  この件をきっかけに、春は学校を退学し日本へ帰国することとなる。

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