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第四章 「形∼最後の授業」
冬休みを迎えた春は、ルームメイトである斉家豪、王源、任楽楽、そして趙亮と遊びに出かけた。しかし五人が乗ったタクシーの運転手が日本人である春の存在に気付くと、そのまま五人を誘拐してしまう。斉家豪、王源と任楽楽は逃げ出すことに成功したが、春と趙亮は辺鄙な場所にある倉庫内に監禁されてしまう。身代金を要求する運転手とその仲間たち。そこへ、警察官である春の叔父が助けに来るが、時既に遅く、趙亮が男たちの手により殺害されてしまう。そして、趙亮と家族ぐるみで親交のあった馬志鵬は、一度は春に心を開こうとしていたが、この事件を機に、彼は密かに春を恨み続けることを決意する。馬志鵬は春に、彼の祖父が日本人に虐げられていた過去があることを打ち明ける。その記録が「烈士紀念館」に展示されていることから、春に対しその記録を見た上で、日本人としての春に、中国人との向き合い方に明確な答えを求め訴えた。
春は自分のせいで仲間の命が奪われたことを悔やみきれずにいたが、そんな春をルームメイトたちは慰め、彼らは、仲間を失った悲しみの中、必死に前を向いて歩こうと誓い合った。
小学校卒業の日、王先生が生徒たちに語った最後の言葉は、春のこの一年に対する評価の内容だった。アイデンティティーが不透明な春が、異なる環境で苦しみ、また、葛藤や困難を乗り越え次第に周囲の人を惹きつけたその経緯、その心意気、それらが王先生により語られ、クラスメイト達は王先生の最後の授業を心に記憶するのであった。
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