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第十章 「希望∼自分という存在の在り処」
北京外国語大学へ入学した春と王恒は、そこで、自分たちと同じく世間で広く「華僑」と呼ばれる仲間、野口学、安田博文、古賀愛美と出会う。五人はすぐに意気投合し、多くの時間を共に過ごすこととなる。日中の狭間で生きる彼らは、度々自分たちのこの社会での在り方等について意見を交わし、時にぶつかり合った。そんな彼らと共に過ごす日々の中で、また、著しく経済成長を遂げる中国で、春はようやく自身の在り方、そしてアイデンティティーに対する一つの答えを見出す。
夏休み、春はハルビンへと戻った。そこで、久しぶりに叔父の息子である義兄の李明と再会した。李明も春と同様、現在は北京を生活の拠点としており、その職業は武装警察であった。春は義兄と共に祖父の家を訪れる。祖父はここ数年で満足に言葉を話すことができなくなっていた。そんな祖父が振り絞って出して言葉を義兄の李明と春はしかと受け止めた。
そして夏休みが明けると、彼女の孫小蕊も北京の大学へと入学した。
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