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第一章 「一歩∼“日本人”というレッテル」

  残留孤児三世の佐々木春(李春)は、11歳の頃、中国ハルビンの私立学校へと留学をする。中国語を充分に話すことのできない春は、校内の集団生活に馴染むことができずにいた。慣れない寮生活、慣れない食事、理解できない授業。そんな中、彼のルームメイトたちだけは、日本人の春を快く受け入れてくれた。しかし、歴史の授業で語られる「抗日戦争」の内容をきっかけに、春は周囲の生徒たちによる差別の対象となる。容赦ない罵声やイジメの対象となった春は、次第に自身の存在意義に葛藤を抱くようになる。血筋や生い立ちには「中国」という背景があるにも関わらず、「日本人」というレッテルは、生徒たちのみならず、先生たちからも偏見の眼差しを向けられるのであった。周囲の圧力に耐え、自身の存在意義に葛藤し苦しみ続ける日々の中、クラスの体育委員である馬志鵬が春に追い打ちをかける。しかしそんな馬志鵬から春を守ってくれたのが、春のルームメイトたちだった。春を日本人としてではなく、友達として見てくれた彼らは、春の初めてできた中国の友人でもあり、春に唯一心の拠り所を築いてくれた。そんな留学生活最初の一週間が終わりを迎えようとしていたある日、今度は隣のクラスのリーダー格である董巍が、彼の仲間を引き連れ春を呼び出す。その呼び出しは、春をこの学校から追放するという「警告」だった。

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